腱鞘炎は自然治癒する?放っておいても大丈夫?症状と治し方、改善ケアを解説

腱鞘炎は自然に治ることもありますが、放置すると悪化する場合もあります。この記事では、腱鞘炎のメカニズムや症状、自然治癒の可能性、そして放っておいた場合のリスクについて詳しく解説します。さらに、安静・冷却・固定といった自然治癒を促す方法や、ストレッチ、マッサージ、日常生活での注意点などの改善ケア、再発予防策まで網羅的にご紹介します。腱鞘炎でお悩みの方、効果的な対処法を知りたい方はぜひ最後までお読みください。

目次

1. 腱鞘炎とは?

腱鞘炎とは、文字通り腱と腱鞘に炎症が起きることで痛みや腫れが生じる状態です。指や手首、足首など、身体の様々な部位で発症する可能性があります。

1.1 腱鞘炎のメカニズム

腱は筋肉と骨をつなぐ線維状の組織で、腱鞘は腱を包み込み、滑りを良くするトンネルのような役割を果たしています。指や手首を動かす際、腱は腱鞘の中を滑らかに移動しますが、同じ動作を繰り返し行うことや、手首に負担がかかる動作を続けることで、腱と腱鞘が摩擦を起こし、炎症を引き起こします。これが腱鞘炎です。

1.2 腱鞘炎になりやすい人の特徴

腱鞘炎は、特定の職業や活動に従事している人に発症しやすい傾向があります。例えば、パソコン作業やスマートフォン操作、手芸、スポーツなど、指や手首を頻繁に使う人は注意が必要です。また、妊娠中や産後の女性もホルモンバランスの変化により腱鞘炎になりやすいと言われています。

要因具体的な例
反復動作パソコン作業、スマートフォンの操作、楽器の演奏、編み物
手首への負担重いものを持ち上げる、赤ちゃんを抱っこする、ラケット競技
ホルモンバランスの変化妊娠中、産後
加齢腱や腱鞘の老化

その他にも、加齢による腱や腱鞘の老化も腱鞘炎のリスクを高める要因の一つです。

2. 腱鞘炎は自然治癒する?

腱鞘炎は、放っておいても自然に治ることもありますが、必ずしもそうとは限りません。自然治癒するか否かは、炎症の程度や原因、生活習慣など様々な要因によって左右されます。軽度の腱鞘炎であれば、適切なケアを行うことで自然治癒することも期待できますが、重症化すると自然治癒は難しく、適切な治療が必要となるケースもあります。

2.1 自然治癒するケースとしないケース

一般的に、腱鞘炎の初期段階で症状が軽い場合は、自然治癒の可能性が高いです。具体的には、安静にすることで痛みが軽減したり、数日で症状が消失するといったケースが該当します。また、炎症の原因が一時的なものである場合、例えば、いつもと違う作業で手首に負担がかかった場合などは、原因となる動作を控えれば自然治癒することがあります。

一方、症状が重い場合や慢性化している場合は、自然治癒は難しいと考えられます。強い痛みや腫れ、熱感などが続く場合は、炎症が進行している可能性があります。また、同じ動作を繰り返すことによって症状が悪化したり、再発を繰り返す場合は、自然治癒は期待しづらいでしょう。このような場合は、専門家の適切な診断と治療を受けることが重要です。

自然治癒しやすいケース自然治癒しにくいケース
初期段階で症状が軽い症状が重い、慢性化している
炎症の原因が一時的なもの同じ動作の繰り返しで悪化、再発する
安静にすることで痛みが軽減する強い痛み、腫れ、熱感が続く

2.2 腱鞘炎を放っておくとどうなる?

腱鞘炎を放っておくと、症状が悪化し、慢性化してしまう可能性があります。初期の腱鞘炎は、適切なケアを行えば比較的早く改善しますが、放置することで炎症が慢性化し、日常生活に支障をきたすほどの痛みやしびれに悩まされることもあります。さらに、腱が断裂してしまうケースも稀にあります。腱が断裂すると手術が必要となる場合もあり、早期の対応が重要です。また、慢性化した腱鞘炎は、治癒するまでに時間がかかるだけでなく、再発しやすくなる傾向があります。そのため、少しでも腱鞘炎の症状を感じたら、早めに適切な対処をすることが大切です。

3. 腱鞘炎の症状

腱鞘炎の症状は、炎症の進行度合いによって大きく異なり、初期、中期、重症化と段階的に変化していきます。早期に適切な対処をするために、それぞれの段階の症状を把握しておくことが大切です。

3.1 初期症状

腱鞘炎の初期症状は比較的軽度で、安静にしていると症状が治まることもあります。しかし、この段階で適切なケアを怠ると、症状が慢性化し、重症化してしまう可能性があります。初期症状の特徴は以下の通りです。

症状詳細
痛み患部を動かした時に痛みを感じます。特に、指や手首を曲げ伸ばしする際に痛みが強くなります。朝起きた時や、長時間同じ姿勢を続けた後に痛みが強くなることもあります。
腫れ患部が少し腫れているように感じることがあります。見た目にはっきりとわかるほどの腫れではない場合もあります。
熱感患部に熱感を感じることがあります。炎症によって患部の温度が上昇するためです。
違和感患部に違和感や軽いこわばりを感じることがあります。指や手首の動きがスムーズではなくなることもあります。

3.2 中期症状

腱鞘炎が中期になると、初期症状に加えて、さらに強い痛みや腫れ、動きの制限などが現れます。日常生活にも支障をきたすようになり、安静にしていても痛みが続くこともあります。中期症状の特徴は以下の通りです。

症状詳細
強い痛み安静時にも痛みを感じるようになります。指や手首を動かす際の痛みも強くなり、日常生活に支障をきたすようになります。
腫れと熱感の増強患部の腫れと熱感が増強します。見た目にも腫れがはっきりとわかるようになります。
動きの制限指や手首の動きが制限されます。曲げ伸ばしが困難になり、物をつかむ、ボタンをかけるなどの動作が難しくなります。
ばね指指を曲げた状態から伸ばそうとすると、引っかかるような感覚があり、ばねのように急に伸びることがあります。これを「ばね指」といいます。

3.3 重症化すると

腱鞘炎を放置して重症化すると、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、手術が必要になるケースもあります。重症化した場合の特徴は以下の通りです。

症状詳細
激しい痛み常に激しい痛みを感じ、日常生活に大きな支障をきたします。睡眠を妨げるほどの痛みになることもあります。
著しい腫れと熱感患部の腫れと熱感がさらに増強します。患部が赤く変色することもあります。
動きの著しい制限指や手首がほとんど動かなくなります。日常生活の動作が非常に困難になります。
腱の断裂最悪の場合、腱が断裂してしまうこともあります。腱が断裂すると、手術が必要になる場合があります。

4. 腱鞘炎の治し方

腱鞘炎の痛みや腫れ、動かしにくさといった症状を改善するためには、適切な対処が必要です。ここでは、自然治癒を促す方法や、症状を悪化させないための注意点について解説します。

4.1 自然治癒を促す方法

腱鞘炎の治癒を促すためには、炎症を抑え、腱と腱鞘を休ませることが重要です。具体的には、以下の3つの方法が有効です。

4.1.1 安静にする

腱鞘炎の最も基本的な治し方は、患部を安静にすることです。炎症を起こしている腱や腱鞘に負担をかけ続けると、症状が悪化したり、慢性化したりする可能性があります。痛みが強い場合は、患部を動かす作業や動作を控え、安静を保つようにしましょう。 パソコン作業やスマートフォン操作、家事なども、できるだけ負担を軽減する方法を検討してください。

4.1.2 患部を冷やす

炎症による痛みや腫れがある場合は、患部を冷やすことで症状を和らげることができます。保冷剤や氷嚢をタオルで包み、10~15分程度を目安に患部に当ててください。 冷やしすぎると凍傷を起こす可能性があるので、冷湿布の使用は避け、直接皮膚に当てないように注意しましょう。また、感覚が鈍っている場合は、特に注意が必要です。

4.1.3 テーピングやサポーターで固定する

患部を安静にするためには、テーピングやサポーターを使って固定する方法も有効です。テーピングやサポーターは、患部を動かないように固定することで、腱や腱鞘への負担を軽減し、炎症の悪化を防ぎます。 ドラッグストアなどで市販されているサポーターを利用したり、テーピングの方法を専門家に相談したりするのも良いでしょう。ただし、固定しすぎると関節の動きが悪くなる可能性があるので、適切な方法で固定することが大切です。固定方法がわからない場合は、専門家に相談しましょう。

方法効果注意点
安静腱と腱鞘への負担を軽減し、炎症の悪化を防ぐ痛みが強い場合は、患部を動かす作業や動作を控えましょう
冷却炎症による痛みや腫れを和らげる冷やしすぎると凍傷を起こす可能性があるので、10~15分程度を目安に冷やしましょう
固定患部を動かないように固定し、腱や腱鞘への負担を軽減する固定しすぎると関節の動きが悪くなる可能性があるので、適切な方法で固定しましょう

これらの方法を実践しても痛みが改善しない場合や、症状が悪化する場合は、自己判断せずに受診しましょう。適切な診断と治療を受けることが大切です。

5. 腱鞘炎の改善ケア

腱鞘炎の痛みを和らげ、回復を早めるためには、適切な改善ケアが重要です。ここでは、自宅でできるストレッチやマッサージ、日常生活での注意点について解説します。

5.1 ストレッチ

腱鞘炎の改善には、手首や指のストレッチが効果的です。痛みを感じない範囲で、無理なく行うようにしてください。

5.1.1 手首のストレッチ

  1. 手のひらを下に向け、腕を前に伸ばします。
  2. 反対の手で伸ばした手の指先を持ち、手前にゆっくりと引きます。
  3. この状態を15~20秒ほど維持します。
  4. 反対側の手も同様に行います。

5.1.2 指のストレッチ

  1. 指をまっすぐ伸ばし、手のひらを上に向けます。
  2. ストレッチしたい指を反対の手で持ち、優しく下に引っ張ります。
  3. この状態を15~20秒ほど維持します。
  4. 他の指も同様に行います。

5.2 マッサージ

マッサージは、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。ただし、炎症が強い場合は悪化させる可能性があるので、痛みが強い時は控えましょう。 痛みがない場合、親指の腹を使って、手首から指先にかけて優しくマッサージします。特に、腱鞘炎になりやすい親指の付け根部分を重点的にマッサージすると効果的です。

5.3 日常生活での注意点

腱鞘炎を改善するためには、日常生活での注意点も大切です。以下に具体的な例を挙げ、それぞれどのような点に注意すべきかを解説します。

作業注意点
パソコン作業キーボードやマウス操作は、手首をまっすぐにして行い、長時間同じ姿勢を続けないように休憩を挟むことが大切です。リストレストを使用するのも効果的です。
スマートフォン操作長時間同じ指で操作を続けると腱鞘炎を悪化させる可能性があります。操作する指をこまめに変えたり、休憩を挟むように心がけましょう。
家事食器洗い、洗濯、掃除など、手首に負担がかかる作業は、ゴム手袋を着用したり、道具を使うなどして負担を軽減しましょう。重いものを持つ際は、両手で持つようにし、手首をひねらないように注意しましょう。
育児赤ちゃんを抱っこする際は、抱っこ紐やスリングなどを活用し、手首への負担を軽減しましょう。授乳クッションも効果的です。

これらの改善ケアを実践することで、腱鞘炎の症状を和らげ、再発を予防することができます。症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに専門家に相談しましょう。

6. 腱鞘炎の再発予防

腱鞘炎は、一度治癒しても、同じ動作を繰り返したり、適切なケアを怠ったりすると再発しやすい疾患です。再発を予防するためには、日常生活における注意点を守り、腱や腱鞘への負担を軽減することが重要です。以下に、具体的な予防策をまとめました。

6.1 正しい姿勢を保つ

猫背や前かがみの姿勢は、手首に負担がかかり、腱鞘炎を再発させる原因となります。 デスクワークやスマートフォンの操作時は、背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識しましょう。椅子に座る際は、深く腰掛け、足の裏全体が床につくように調整してください。モニターの位置は、目線よりやや下に設定し、キーボードとマウスは身体の近くに置くことで、腕や手首への負担を軽減できます。

6.2 適切な休憩をとる

長時間同じ姿勢を続けることは、腱鞘炎の再発リスクを高めます。 デスクワークや手作業を行う際は、30分~1時間ごとに休憩を挟み、手首や指を軽く動かしたり、ストレッチを行ったりしましょう。休憩時間には、軽い運動や散歩を取り入れるのも効果的です。また、睡眠不足も腱鞘炎の再発を招く要因となるため、十分な睡眠時間を確保することも大切です。

6.3 作業環境の改善

作業環境を改善することで、手首への負担を軽減し、腱鞘炎の再発を予防できます。具体的には、以下のような工夫が有効です。

対策具体的な方法
キーボードとマウスの位置身体の近くに置き、腕や手首を自然な角度に保ちましょう。
マウスパッドの使用手首の摩擦を軽減し、負担を和らげます。ジェルパッド入りのものなど、自分に合ったものを選びましょう。
リストレストの使用キーボード操作時に手首を支え、負担を軽減します。ただし、リストレストに体重をかけすぎると、かえって手首に負担がかかる場合があるので注意が必要です。

6.4 生活習慣の改善

日常生活における何気ない動作が、腱鞘炎の再発につながることもあります。 物を持つ際は、指全体でしっかりと握り、手首に負担がかかりにくいように意識しましょう。重い荷物を持つ際は、リュックサックやキャリーバッグなどを活用し、片手だけに負担が集中しないように工夫してください。また、冷えは血行不良を招き、腱鞘炎の再発リスクを高めるため、手首を冷やさないように注意しましょう。

6.5 腱鞘炎になりやすい動作を避ける

腱鞘炎は、手首や指の使い過ぎによって発症しやすいため、再発予防のためにも、手首や指に負担がかかる動作はできるだけ避けましょう。 例えば、スマートフォンの長時間使用、パソコンでのタイピング、編み物、楽器の演奏などは、腱鞘炎を再発させる可能性があります。これらの作業を行う際は、こまめな休憩を挟んだり、サポーターを着用したりするなどして、手首への負担を軽減することが大切です。また、どうしても避けられない場合は、作業時間や強度を調整するなど、工夫してみましょう。

7. まとめ

腱鞘炎は、使い過ぎによる炎症が原因で起こるため、適切なケアを行えば自然治癒も期待できます。初期症状であれば、安静や冷却、テーピングなどで症状が改善されるケースが多いでしょう。しかし、重症化すると手術が必要になる場合もあります。自然治癒を目指すには、まず炎症を抑えることが重要です。患部を安静にし、アイシングを行いましょう。また、テーピングやサポーターで患部を固定することも有効です。日常生活では、手首や指に負担をかけないよう、正しい姿勢を意識し、こまめな休憩を挟むようにしましょう。さらに、ストレッチやマッサージで筋肉の柔軟性を高め、血行を促進することも再発予防につながります。症状が改善しない場合や悪化する場合は当院にご相談ください。

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